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白銀の墟 玄の月(十二国記)・読了 [小説]

読んだのはもう1年くらい前になるのですが、なかなか感想を書く機会がなかったので、この機会に書いてみます。

十二国記を読み始めたとき、このシリーズは大きく分けて陽子の話と泰麒の話の2つが軸になっている、と考えていました。というのも、このシリーズで2作以上主役扱いになっているのがこの2人だけだったから。
でも、シリーズを読み進めていくとどうも陽子は後々「黄昏の岸 暁の天」で泰麒を助けるという役目があるために事前に掘り下げられていただけで、実際は泰麒が大きな軸になっている、というのがわかりました。
泰麒は生まれる前に蓬莱に流されたものの「風の海 迷宮の岸」で蓬莱から連れ帰られて王を選んだわけですが、「黄昏の岸 暁の天」で王とともに行方不明になって再び蓬莱へ流れてしまます。最後の最後で麒麟として全ての能力を失った上で再び崑崙に帰って来るわけですが、その再び蓬莱に流れたときの暮らしが「魔性の子」で描かれていたわけで、これはもう泰麒の話なんだな、と。そもそも「魔性の子」が1番早く出版されているというのもありますから、ここまでの十二国記は「魔性の子」の中の泰麒がなぜそういう立場に置かれているのかを壮大に説明する前振りだったのかな、とすら思いました。

※ここからネタバレありです。

で、今作「白銀の墟 玄の月」は全ての能力を失った泰麒が帰ってきた後の話。
本来泰麒が選んだ王である驍宗が治めるはずだった戴国は偽王の阿選が治めている……はずだったのに、いろんなものを放置して阿選は城の奥に閉じ籠ったまま。驍宗の味方を徹底的に排除する恐怖政治を敷いた後、全てを放り出してしまったようで、国の機関はかろうじて官僚たちが回している状態。
そんな中で泰麒が戴国に帰っては来るものの、角を失っているので本来感じるはずの王の気配が感じられず、わずかに残る驍宗の最後の目撃情報を追っている、という絶望状態から話はスタート。

この状態からどうやって驍宗を見つけ出すのかと思いながら読んでいると、次々に新たな問題が出てきます。
全く政治をしなくなった阿選は実は死んでいるのではないかという疑問が出てきたり、仲間と一緒に驍宗を捜していたはずの泰麒がいきなり単独行動で城に乗り込んで、阿選こそ新王だと宣言したり、戴国の片隅で大怪我をした武将らしき人の描写が度々入って来て、その人が亡くなったり。
阿選が生きているとわかったらわかったで、なぜ政治を放り出しているのかが不明なまま。驍宗を殺してまで手に入れたかった王座なのに、驍宗の信奉者たちを排除する以外何もしないのはなぜなのか。
ブラフと真実が入り乱れて話が進んでいくので、片時も目を離せない状態になり、ついつい先を読み進めたくなりました。

それで話の主軸である驍宗の探索が続くわけですが、驍宗は最後に目撃された場所からどこかへ落ち延びているから死んでいない(王が死んだときに鳴くという白雉が鳴いていないので)と思われていたのが、実は同じ場所に留まり続けている、とわかったときは、なるほどな、と唸りました。
この世界では王になると神籍に入って不老不死になるので、即死するような攻撃を受けない限り死なず、餓死もない。なので、満足に食料もない出口のない洞窟の中でも生きていられる、という。
大怪我をして亡くなった武将はブラフ、慢性的な物資不足の貧しい戴国であっても神に祈ってお供え物を川に流す親子の描写は単なる情景描写ではなく、そのお供え物が巡り巡って驍宗の元に流れ着いていろいろと役立つなど、実はそっちが伏線だったのかというあって、本当に飽きさせない展開でした。

また、読者として既に植え付けられていた麒麟とはこういう生き物だという先入観によっていい意味で騙される展開も多くて感心しました。
例えば、麒麟は慈悲の生き物で基本的に人を疑わない、というのがこれまで何度となく描かれてきたので、麒麟は嘘をつかない=泰麒が阿選が新王だと言っているのだからそれはもう真実なのではないか?、と思ってしまうわけですが、実は蓬莱で嘘にまみれた人間世界でもまれた泰麒は平気で嘘をつくようになっていて、阿選が新王だというのは嘘だとわかります。
そして、自らが選んだ王以外には決して跪かない麒麟である泰麒が阿選に対して血を流しながらも叩頭礼ができたのは角が失われているから可能だったのかな……とおぼろげながらに考えていると、最後の最後で実は角が復活していたことがわかる辺りは、本当に読者の心理誘導が上手いな、と感じました。
麒麟は血の穢れを最も嫌うという性質についても最後の最後でどんでん返しに使われていて、そういう風に使ってくるか、と感心しきりでした。
ただ、この辺りは「魔性の子」をちゃんと読んでおいた方がいいだろうな、と感じました。崑崙で蝕を起こして行方不明になったときの泰麒のイメージのままだとちょっとギャップがあるかも、なので。

作品としては今後短編集が出るとのことですが、長編としてはこれが最後のようです。
慶国も戴国もそれなりに明るい未来が見えているところなので、これで終わりでいいのではないかな、と感じています。
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創竜伝・完結 [小説]

この作品と出合ったのはやっぱり高校の図書館で、完結まで追ってきた「アルスラーン戦記」「宇宙皇子」などと同じでした。
また、田中芳樹さんの作品として初めて読んだのが「創竜伝」の1巻でした。
当時OVAが発売されるなどもあって、タイトルを何となく聞いたことがあるくらいの認識だったのですが、流行っているなら面白いのだろうと思って読み始めました。
読み始めた当初は6巻くらいまで発売されていて、確か図書館では8巻くらいまで読んで、以降は自分で買って読むようになりました。

当時の印象だと、まあまあ面白い作品だな、という感じでした。
むしろ、同じ作者の別作品を読んでみようと手に取った「銀河英雄伝説」にドハマりしたくらいで、私の中での田中芳樹作品ランキングとしては、銀河英雄伝説>アルスラーン戦記>創竜伝>タイタニア>灼熱の竜騎兵くらいの順番でした。
ただ、当時の刊行ペースだと「創竜伝」が一押しという感じでしたし、バレンタインにチョコを送るとお返しがもらえるというのを「創竜伝」のあとがきである座談会で知ったというのもあって、チョコは竜堂四兄弟宛に送っていました。
まぁ、チョコを送った最初の年に阪神淡路大震災があって、お返しは寄付するという手紙が届いて心底ガッカリしたりとかもあったのですが(今なら確かにそうすべきだと納得できるのですが、当時は若かったこともあって納得できず)、翌年はちゃんとお返しが届きました。

その後就職してからはチョコを送ることもなくなったのですが、新刊チェックは欠かさず行って13巻までは発売日当日に買っていました。
ただ、12巻から3年ぶりに発売された13巻では、巻末の座談会で911テロの後のアメリカのやり方についてものすごい批判が書かれていて、本編よりもむしろその印象が強かったです。
政治的なこととかを作者がどう考えていようと私は気にならないタイプなのですが、巻末のおまけとはいえ登場人物の口を借りてその作者の思いを話しているという風に捉えてしまって、それはどうなんだろう、と思ってしまいました。
他にも、当時流行っていた終末論を皮肉たっぷりに煽っていたりもして、その座談会を書くために本編を書いてこの時期に出版したんじゃないか、とすら思ってしまって、本編のことはあまり記憶に残らなかったです。
まぁ、刊行ペースが早かったときは本編に結構な政治批判が入っていましたが、本来1990年代後半の時代設定だったのがそれを現実が通り越してしまったせいで、書ける場所が座談会しかなかったという風にも思うのですが……どうにもこうにも納得できませんでした。
11巻、12巻と番外編で久しぶりの本編再開というのもあり、ウッキウキで読んでみたら話はあまり進んでない上にあの座談会、ということで、いろいろショックでした。

※ここからネタバレ入ります

で、それから17年。
記憶している内容は、
・竜堂四兄弟イギリスで大暴れ(小早川奈津子も一緒)
・日本では富士山噴火中
くらいでした。

「アルスラーン戦記」はなんやかんや数年毎に新刊が出ていたので話をおおよそ覚えていたのですが、「創竜伝」はブランクが17年あったのと13巻ショックでかなり記憶が曖昧でした。

そんな感じで14巻を読み始めて大丈夫なのかな……と思っていたのですが、意外と大丈夫でした。
四兄弟たちが日本に帰ってきていて、小早川奈津子は京都幕府を立ち上げて日本から独立しようとしている、という部分から始まっていたものの、理由はよくわからなくてもこれはこれで話が理解できるからまぁいいか、と。
何やかんやで敵が襲ってきて、竜堂四兄弟は降りかかる火の粉を払っていく感じで話は進みましたし、その都度現状の説明があったりしましたし。

その後、14巻の終盤で敵の本拠地らしい場所がわかって、最終巻ではラスボスも登場して、読み終わってみれば悪くない終わり方だったかなぁ、と思えるようになりました。
他の田中芳樹作品にあるように、主要登場人物が死ぬとかありませんでしたし。
ラスボスを追いかけるためにまずは修業を始める、というところで終わっていたものの、四兄弟がどうにかして人間の世界で目立たないように暮らして行くのかを考えるというのではなく、仙界を拠点として新たな目標を見つけて終わるという形だったので、希望が持てる終わり方だったなぁ、と。
この終わり方だったら、別の組織がまたどこからかやって来て四兄弟を襲うとかもなさそうでしたし。元の生活に戻ってもまた繰り返しになる未来が見えるより、全く新しい世界になるならその方がずっとよかったと思います。
また、最終巻を読むまでなぜ12巻で過去の仙界での話を書いたのかわからなかったのですが、結末を読んだら納得できました。最後の最後で仙界がガッツリ絡んでくる展開だったので、これはあった方がよかったな、と。

ちなみに、散々大暴れした小早川奈津子に関しては、最終巻の終盤で体に取り込んでいた竜の血の効果が切れて死亡、となっていました。
誰かに倒されるのではなく、エネルギー切れでの死亡は彼女らしいと思う一方で、死ぬタイミングが絶妙によかったのはちょっと都合がよすぎる感じもしてしまいました。
エネルギー切れに関する伏線がもう少しあったら違ったのかもしれませんが。

その他、1巻発売当初は携帯電話もあまり普及していない世の中だったものが20年以上経過してしまったので、14巻以降は普通にみんなスマホを使って報道用にドローン飛びまくりでした。
あまり本編に関わらない部分ではあるのですが、その辺りは年代を本当の1990年代に縛らなかったんだなぁ、と妙に印象的でした。本編内での時間は1年経っていないってことになっていますが、その間にいろいろ発達したので現代に合わせたようでした。

ひとまず、完結を諦めていた作品がこうして完結してくれたのはよかったです。
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アルスラーン戦記・完結 [小説]

※これは約1年3ヶ月前の記事「アルスラーン戦記・完結まで残り1巻における結末予想」の続きです。
また、最初からネタバレ全開です。
ご了承ください。


足掛け30年、私が本書に出合ってから20数年、ようやく完結しました。
長かった……本当に長かったです。
でも、無事完結するところまで読めて、無事最後の感想を書けて、本当によかったです。

それではまず最初に、結末予想はどこまで当たっていたのかを検証してみます。

Q1.アルスラーンと十六翼将の生死は?

本作は「銀河英雄伝説」と違い、ザッハークとの最終決戦後のエピローグが存在しました。
そこには十六翼将が全員亡くなるまでが描かれていたのですが、ここではザッハーク戦後に生き残っていた、という基準での生死とします。

A1.
アルスラーンは死亡。
生存者はエラム、ギーヴ、ファランギース。
残りの十六翼将は全員死亡。

やはりというか何と言うか、ここでも皆殺しの田中は健在でした。
もう最終巻冒頭から十六翼将死にまくりでした。
ギーヴとファランギースが生き残るのではないかということ、アルスラーンが死ぬのではないかということ、ダリューン以外の他の十六翼将は誰が死んでもおかしくない、という辺りは予想通りでしたが、まさか全員死ぬとは……しかもダリューンまで。
ダリューンはザッハーク戦直前までは生きていたのですが、ザッハークに殺されてしまいました。
ルクナバードを持ったアルスラーンが出る前にダリューンがザッハークとの直接決戦に出たので、これは死ぬ、というフラグがその時点で立った感じがしました。
ザッハークはアルスラーンとの一騎打ちではなく、生き残った十六翼将+アルスラーンの1対多数戦になるんじゃないかと思っていたのですが……その辺り、アルスラーンは正々堂々としていたということなのだと思います。

作中で何度も死線を潜り抜けていたキシュワード、ザッハークに対してあまり恐怖心のないジャスワント、登場が遅かったパラフーダ辺りは生き残るのではないかと思っていたのですが、全員死亡という結果に。

ナルサスの後継者的立場だと思っていたエラムが最後まで語り部として生き残った、ということに関してはちょっと意外でした。


Q2.ザッハークは封印することしかできないのか?殺せないのか?アルスラーンの命と引き換えに完全消滅させるのでは?

A2.
ザッハークは人間に作られた存在。
宝剣ルクナバードはザッハークを制御できなくなった人間たちが作った緊急対処用の装置。
ザッハークを殺したところで、また作られてしまえば復活してしまう。

この物語が始まったときから、この世界は魔法と魔物が普通に存在する世界で、ザッハークは自然発生した世界征服を狙う魔王、というように解釈していたので、実はザッハークは人間が作ったものだというのが出てきたときはかなりビックリしました。
言われてしまえばこちらの方がしっくりくるものではあるのですが。
この時代のザッハークはアルスラーンがルクナバードでなんとか封印しましたが、時間が経てば復活することもまたあり得る、という結末でした。
ラスボスの正体を見破ったら、あとは完全消滅させて後世の憂いはない、というのが定番ですが、そうはなりませんでした。


Q3.アンドラゴラスとタハミーネの実子は結局誰?

A3.
銀の腕輪を持っていた3人の女性は全員偽物。
2人の実子は男子で死産していた。タハミーネはその出産で子供が産めない体になっていた。

これに関してもかなり意外でビックリしました。
タハミーネ自身が実子は女子で、後継ぎにはなれないからどこかへ放逐された、ということを信じていたというのもあり、銀の腕輪を持つ誰かが実子なのだろうと思っていました。
真実はずっとアンドラゴラスが隠していて、タハミーネはもう子供を望めないとわかっていたからこそ実子に執着していた、ということのようでした。


Q4.パルスの周辺国家がパルスに攻め込んだけどどうなった?

A4.
ラジェンドラが治めるシンドゥラ以外は軒並み指導者が死亡。
のちの戦国時代へ続く前振りとなってしまう。

最終巻は冒頭からとにかく登場人物たちが死にまくりましたが、それは十六翼将に限らず、敵に関しても言えることでした。
ギスカール、ヒルメス、フィトナ、などの主だった敵将は何だかんだで死亡。
他にも、語られることはないかもと思っていたタハミーネ、宰相のルーシャンなどなど、とにかくどこの国でも中枢にいる名前のある登場人物たちは片っ端から死んでいく状態でした。

なので、最終的にはどこの国もトップ不在になって戦国時代突入、と。
本当、ここまで死ぬとは思っていなかったので、読み進める毎にこの人もこの人も……という状態になったときは、この話をまとめるには皆殺しにするしかなかったんじゃないかな、くらいに思いました。

そんなこんなでエピローグでは前述のように戦国時代に突入。
最後に再びパルスが国家としての足掛かりをつかんだあたりで終了、となっていました。


考えてみると、この作品は王道ファンタジーの形を取ってはいたけど、中身はその真逆だったなぁ、と感じます。
作者がこの物語のを生み出すきっかけになったのが、昔話で貧しい子が実は王子様だったとわかる話の逆をやってみよう、という発想だったというのは各所で語られています。そういう昔話の結末っていうのは、魔王を倒して世界に平和が戻り、人々は末永く平和に暮らしました、というのが定番ですが、こちらは何とか均衡を保っていた各国の情勢が一気に壊れて戦国時代突入、という真逆の結末。なので、最初からこういう結末になることが想定されていたのだろうな、と妙に納得したりもしました。

そして、ラストシーンについて。
年老いたエラムがアルスラーンと残りの十六翼将と共に旅立っていくところに、個人的にはエステルがいてくれたらなぁ、と思ってしまいました。
幻を見ているのはエラムなので、そこまで交流のなかったエステルがいないのは当然と言えば当然なのですが、アルスラーンとエステルにくっついてほしかった私としては、エピローグにエステルがいてくれたらなぁ、と思わずにはいられませんでした。
アルスラーンの遺言も、ダリューンと同じ墓に入れてくれ、でしたし。あぁ、エステルじゃないんだなぁ、と。アルスラーンからしたら、ダリューンは誰より自分に対して忠誠を尽くしてくれてましたし、誰より頼りにしていたので、それはそれで当たり前なのですが。

ただ、それ以外の部分については概ね納得できる結末でした。
ギーヴの過去は結局わからずじまいでしたが、それはそれでキーヴらしい感じがしますし。
メルレインはヒルメスに対して直接手を下すことはできませんでしたが、アルフリードの仇を一応取ることができていましたし。

20数年待って、この結末を見ることができたのは幸せだったと思います。
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アルスラーン戦記・完結まで残り1巻における結末予想 [小説]

現在アニメ放映中の「アルスラーン戦記」。
アニメでは現在原作の第1部後半が描かれていて、おそらく第1部完結までは確実にアニメ化されると思われていますが、原作は第2部残り1巻、最終巻を残すのみというところまで来ています。
この作品に出会ったのはまだ私が高校生の時、「創竜伝」→「銀河英雄伝説」と田中芳樹作品に魅了されていたド真ん中の時期でした。
そして、この作品を初めて手にした時、既に原作は第1部が完結していて、第2部の9巻までは刊行されていました。第1部の段階で、「アルスラーン戦記は2部構成」「第1部は7巻、第2部は9巻」だと既に記されていて(記憶の中ではどちらも全7巻だったように思うのですが)、「銀河英雄伝説」のときもしっかりした構成でキッチリ10巻で終わらせているし、「アルスラーン戦記」も終わりがもう決まっているみたいだから、数年以内には完結するだろうなぁ、くらいに思っていました。
でも、ここからが本当に長くて、続刊が出るまで数年かかることなどザラ、昨年アニメ化したことでようやく完結まで見えてきた、という感じです。
第1部を読んだのがもう20年くらい前なので、おおよそのストーリーもほぼ忘れ去ってしまったため、アニメを見つついろいろ復習しているような感じです。


※ここから本作及び銀河英雄伝説のネタバレが多分に入ります。ご了承ください。

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フルメタル・パニック!・完結 [小説]

※最初からネタバレ全開で行きます。


完結した長編小説の中で、かなり久しぶりに満足できた作品に出合えました。
最後の方はかなり刊行ペースも落ちてしまいましたが、待った甲斐あってかなりいい終わり方だったな、と。

この作品を読み始めたのは、確か5~6冊くらいしか出ていない時で、お勧めの小説は何かありますか?とここで呼びかけた時に教えてもらったように記憶しています。

それまで小説と言えばライトノベルも含めてシリアスなものしか読んだことがなかったので、コメディタッチのこの作品は私の中ではかなり新鮮でした。
小説でも読んでいて笑えるのだ、と知りました。

ただ、ほぼコメディタッチの短編に比べて、当初本編はあまり好きにはなれませんでした。
舞台は現代日本なのに、不可視にできる人型のロボット同士で戦ったり、心の強さを物理エネルギーに変換して戦ったり、科学的に進み過ぎていることに対してかなり違和感がありました。
序盤で「この世界は進み過ぎている」と登場人物が語るシーンがあることでかろうじて納得はしていたものの、ウィスパードとは何なのか?、という謎解きが出て来るまでは、この作品は短編の力で持っているな、くらいに思っていました。

ついでに、かなめがウィスパードとして覚醒した後も、かなり後半になるまで敵が本格的に攻めてこなかったのも、このまま作者は完結させるつもりないのかな?、とすら思っていました。
「踊るベリー・メリー・クリスマス」辺りまでは、ずっとそんな感想でした。


それが覆されたのが、ラスト3巻。
まず最初に出てきたウィスパードとは何なのか、という謎解き。
ウィスパードは未来から送られてきた知識を受信して、それを現代に利用しているということで、数百年後の知識を受信していたら、そりゃオーバーテクノロジーにもなるよな、と。
後にこれは数百年後からの知識ではなく、未来のかなめが過去に向けて知識を送っていて、それが何百回も繰り返された結果、この世界の文明になったのだというのがわかるわけですが、こちらの謎解きの方が更に納得させられるというのはすごいな、と素直に感じました。

また、終盤はそのオーバーテクノロジーによって変わってしまった世界を本来の姿に戻すのを阻止する、というちょっと間違えば話の方向が明後日の方に行ってしまいそうなのを上手くまとめていて、その辺りもまたすごいな、と。
並行世界とか分岐未来とか、そういったものを観測できるとかまで話が広がってしまうとおかしなことになったと思うのですが、そういうものは存在するかもしれないけど観測することはできないし、世界が本来の姿になったとしてもそれがおかしいと感じることはない、というところに留めておいたのは本当に上手いな、と感じました。
もし私がこういう話を書いたとしたら、ここですごく風呂敷広げてしまうと思いましたし。

で、終盤で活きてくるのが序盤の世界観設定。
ウィスパードが生まれるまでは現実の世界とほぼ同じ歴史を辿っていたのが、ウィスパードが生まれたことで歴史が変わってしまっている、という。
例えば、この作品の世界では米ソの冷戦は終わっていなかったり、ソビエトも崩壊してなかったり、中国が南北に分断していたり。
この作品の世界では並行世界を観測することはできないけど、現実世界がある意味この世界からすると並行世界でもあるわけで、その辺りちゃんと最初から考えられていたのだろうな、と。
中盤までは行き当たりばったりの話になっているのかとも思っていましたが、全くそんなことはなく。
この辺りがすごく満足できた部分でした。

最後に唯一気になったところは、最後の戦い寸前で宗介に対して、

・宗介は平和な世界で暮らすべき人間だった
・宗介は戦いに向いてない
・宗介自身、ASの操縦に関しても才能があったわけではない

などなど、宗介は本来戦いの中にいるべき人じゃない、という描写はちょっと取ってつけたような感じがしてしまいました。
それまで宗介はASの操縦は天才的ってイメージを持っていたので、違和感がありました。
まぁ、宗介は唯一アーバレストやレーバテインを操縦できたというだけで、ASの操縦が天才的ということではなかったわけで、私の中でそういうイメージがあったから違和感が出ただけなのですが。

今後は短編が出るかもしれないとのことで、それにはちょっと期待しています。
久しぶりに楽しい話を読んでみたいと思っていたところですし。
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宇宙皇子の話 [小説]

このブログで記事を書いた時からずっと定期的にアクセスがあるのが「風の大陸」の話です。
ブームがピークだった時にネットが普及していなかったせいか、最後まで追い続けた人がそこまで多くないせいか、ネットでの感想はそこまで多く存在しないので、定期的にアクセスがあるようです。
それと似たような作品としてふと思い出したのが「宇宙皇子」だったので、今回は宇宙皇子について書きたいと思います。

※あまりよいことは書いていないので、ファンの方は閲覧注意です。 また、最初からネタバレ全開で行きます。


宇宙皇子は最終的に全48巻となった長編で、地上編、天上編、妖夢編、煉獄編、黎明編(煉獄編まで全10巻、黎明編のみ全8巻)とあり、ブームのピークは天上編のときだったと思うのですが、私自身この作品を読み始めたのは煉獄編の3巻が発売された頃でした。
天上編の途中までは劇場版が制作されたり、OVAが制作されたりして、当時としてはかなりの勢いがあった作品だったように思います。
私自身この作品を知ったのは確かテレビで劇場版が放映されたことでしたし。
そのときは登場人物のこととかまるで知らなかったので、話自体何が何やら……だったのですが、高校の図書館にこの作品の地上編・天上編があり、借りて読んでみました。

で、この作品、確かに天上編までは面白いと感じていました。
話の進みはすごく遅いのですが、この作品の時代背景が飛鳥~平安時代初期くらいまでだったので、当時個人的に古代の話が好きだったこともあり。
また、天上編で各務が帝釈天にさらわれて、皇子が助けるためにあれやこれやがんばる辺りは、続きが気になって仕方なかったものです。
劇場版で描かれていたのもこの辺りで、今更ながらに思えば、劇場版が制作された理由もよくわかります。

で、天上編を読み終わっても続きが気になったもので、図書館で妖夢編以降を入れて欲しいとリクエストしたら本当に入れてくれて、誰よりも早く借りて読んだのは良い思い出です。
最終的に図書館では煉獄編の8巻くらいまで読んだ気がします。
受験生で小説なんか読んでいる場合ではなかったときも、宇宙皇子だけは読んでいました。

しかし、この作品は妖夢編以降大失速。
妖夢編はひたすら歴史を追っていくだけ。長岡京とか平城京への遷都や薬子の変などなど描かれていたのですが、読んでいるこちらとしては史実を知っているので、結末はわかっているわけです。言わば、犯人が分かっている推理小説を読んでいるような感じ。
皇子や各務が歴史にも影響を与えていたんだよ、と言われても、何だか違うような……と、ずっと思っていました。
地上編で皇子が小角から、お前の名前は歴史に残らないけど確かに歴史に影響を与えたんだよ、っていう感じのことを言うシーンがあるのですが、そのときは説得力がそれなりにあると思っていたのに、このときにはそれが消えていました。
地上編では歴史を追うだけではなくて、皇子と各務が沖縄行ったり、皇子がなよ竹と出会ったりしていろいろとイベントがあったのに、妖夢編はほぼ歴史を追うだけだったので、私の中の好感度はかなり下がっていました。
一応、皇子や各務たちが出世して直属の部下ができたりして、その子たちとの話もあったわけですが、なよ竹などの話に比べたらそこまで面白いわけでもなく。

でも、まだ諦めてもいませんでした。
妖夢編は元々描かれる予定のない話で、話の厚みを増すために描かれたとのことだったので、煉獄編に入れば面白さが復活するだろう、と思っていました。
天上編は天国を旅する話で、煉獄編は地獄を旅する話。
天上編が面白かったのだから、煉獄編は大丈夫!

という期待も、煉獄編でもろくも崩れ去りました。
天上編は最終的に皇子の本当の父親に会う、という目的があったのですが、煉獄編ではそういう話もなく、しかも7巻くらいで地獄から地上に戻ってきてしまって、それはもう煉獄編ではないのでは……と。
また、別作品「天上の虹」の主人公である持統天皇が、この煉獄編で地獄に落とされていることが判明して、天上の虹でかなり持統天皇に対して私が好感を持っていたこともあり、宇宙皇子の評価は私の中でどんどん下がっていきました。
確かに、この作品では持統天皇が息子を天皇にするために追い落とした大津皇子をかなり良い人だったと描いていて、大津皇子は死後天上界にいたりしてかなり厚遇していたので、持統天皇が地獄にいるっていうのもわからないでもないですが……むしろ一般的な史実を見たらこちらの方が正しいとは思うのですが……本当に個人的に納得できなくて。

それで最後の黎明編に入るわけです。
この話は、小角から独立した皇子や各務が、差別のない流民王国を作って、そこで起きる様々な問題に対処していく、という話でした。
流民王国という構想自体妖夢編の辺りから入っていて、皇子や各務は当時戸籍を持っていない最下層の身分だったということもあり、貴族とか平民とかそんなの関係ない国を作ろう、と。

その構想自体決して悪いとは思わなかったのですが、これが最後かなりグダグダで終わってしまっていました。
流民王国は天上界の神々からも認められて、その証拠として大量の瑠璃が空から降ってきたりしたのですが、皇子は元々天上界の神の子だから天上界に帰らなければならなくて、沖縄で永遠の命を手に入れた各務は仏になるためにやっぱり地上を離れないといけない、となり。
しかも、神になったり仏になったりしたら地上での記憶はすべて無くす、と。
黎明編の後半でようやく皇子と各務は結ばれるのに、最後は2人とも地上から消えて、その後は別々で、最終的には流民王国も皇子と各務というリーダーを失って自然崩壊……

結局、何だったんだろう?
と思ってしまったのです。
差別のない流民王国というのが、一時期古代日本に存在したということに意味がある、とはどうしても思えなかったです。
流民王国を作って、そこでみんな仲良く暮らしました、で終わるわけはないとは思っていたのですが、これだけ長く続いたのだからもう少し救いのある終わり方だったらなぁ、と。


で、この作品本当は全50巻だったところ、最後の7・8、9・10巻が合本扱いで全48巻となりました。
煉獄編までは新書版だったのが、黎明編からは文庫版となり、最後の方はかなり人気も落ちていたのだと思います。
また、黎明編には地上編や天上編からの引用文章がかなりあったのですが、そこを読むと文章自体が面白いと感じることもあって、最後は文章力も落ちていたのかな、と感じる部分もありました。
漫画で言うなら、最後は成長しすぎて変な癖がついてしまったというか、そんな感じでしょうか。
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ダブルブリッド・完結 [小説]

雑誌の感想がちょっと間に合わなかったので、ストックしていたものの中から小説の感想を。
明日は多分ゼロサムの感想が更新できるはず。


ライトノベルはそこまで数を読んでいる方ではないですが、長編になると徐々に刊行ペースが遅くなって、あわやフェードアウトしそうになる、もしくは未完のままフェードアウトしてしまう作品が多いように思います。
たまたま私が買っているものがそうなのかもしれませんが、ダブルブリッドもあわやフェードアウトしそうになった作品でした。

最終巻とその前の巻の間が4年半ということもあって、忘れかけている設定がいくつかありました。
浦木と飯田の区別がつかなかった、片倉晃って誰だっけ?、Ωサーキットってなんだっけ?、という感じで。
最初から読み返せばいい話ではあるのですが、9巻分読み返すのも辛いのでそのまま最終巻を読みました。

とりあえず、ネタバレのない感想から。
9巻発売時点で、次巻で完結する、と言われていたものの、無理矢理終わらせた感じが強かったな、というのが読み終わってからの第一印象でした。
中ボスと思っていた人がラスボス扱いで、ラスボスはいきなりいなくなってしまう展開で、一応いろいろ決着を付けて終わっていたけど、拍子抜けだった感じが否めませんでした。

長期連載作品でままあることなのですが、全10巻の場合だと序盤の3巻くらいまでは結構面白くて、そこから中だるみな展開の遅い話が始まって、最後は尻すぼみで終了……という典型だったような気がします。
漫画化された頃が思えば一番面白かった時期かもしれません。

では、ここからネタバレありの感想です。
ちょっと黒いことが書いてあるので、気にする方はスルーでお願いします。


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名探偵に薔薇を・感想 [小説]

たまの平日更新。小説の感想です。

「名探偵に薔薇を」はスパイラルの原作者である城平京さんの推理小説です。
数年前に「もう読まないから」と友人から譲り受けたものを、今更ながら読んでみました。

今まで手を付けなかったのは、スパイラルの初期の頃は本当に絵だけの漫画だと思っていて、トリックも推理も偶然に上に成り立っているようなものが多くて、これ本当に推理小説が書ける人が原作なの?、と思っていたとこもがあったためで、とんでもない駄作を読むことになるんじゃないかという不安があったせいです。
でも、読んでみないことには始まらないので読んでみました。

元々は第2部の「毒杯パズル」のみの作品だったものを、第1部の「メルヘン小人地獄」を書き加えて1冊の本になったという作品。普通に最初から読んでみました。

ネタバレが多すぎるので、ちょっと隠します。
ちなみに、あまりいいことは書いていないので、嫌いな方はスルーでお願いします。

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でたまか・完結 [小説]

※今回の日記はどす黒くないです。ご安心ください。(やや批判は入りますが)

この作品はコンスタントに続編が発売されて、最後まで非常に読みやすい環境で読むことが出来た作品でした。
作品を買い始めたのが第2部の2巻が出たばかりくらいの頃だったのですが、第1部を読む限りだと、どうしても「貧相な銀河英雄伝説」に見えてしまって、あまり馴染むことができませんでした。
結末がわりと意外だったのでその場で読むのを止めることはなかったのですが、もし第1部が大団円だったら、続きは読んでいなかったかもしれません。

特に気になっていたのが主人公・マイドのライバルとして出てくるアリクレスト。
見た目が銀河英雄伝説の主人公・ラインハルトそっくりなんです。
作者には全くそういうつもりがなくても、ビジュアルが似ていることもあって、銀河英雄伝説を意識していて、ラインハルトあえてを生まれながらにして大きな権力を持っているバカな貴族として出しているのかな、と無意識に勘ぐってしまうところがありました。

その気持ちは第2部になっても続いていて、つまらなくはないけどこのまま読み続けてもいいことあるのかなぁ、というレベルになっていました。
詳細はネタバレのところで語りますが、とにかくアリクレストが気に入らなかったから読みたくない、という思いが強かったです。

でも、第3部は言葉も通じない宇宙人・ザナックスと戦う話になって、以後はわりと面白く読むことが出来ました。
これだけ宇宙人と真面目に戦う話(褒め言葉)は今まで読んだことがなかったので、読んでいて新鮮でした。
ウェストウィックIIの話など、ちょっと表現がくどいな、と思うところはありましたが、悪くない終わり方で、読後感もそれなりによかったです。


以下、ネタバレありの感想です。

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倒凶十将伝・完結 [小説]

WORD・ガンガンパワード・ガンガンWINGの感想は月曜日更新予定です。

※本日の日記はまたどす黒い部分があるので、嫌いな方は見ない方がよいかと思います。
「倒凶十将伝」のファンだという方は特に。
ちなみに、「風の大陸」よりどす黒いです。

この作品も「風の大陸」同様、最終巻が最近発売された作品です。
最終巻が出るまで5年くらい待ちましたが、これだけ発売期間が開くと、いくらなんでも過去の話を忘れます。
でも、ぶっちゃけこの作品が面白いと思ったことはただの1度もなく、いまさら最初から読み直す気力もなかったので、おぼろげな記憶のみで最終巻を読み終えました。

思い返せば、Gファンタジーで漫画版の連載が始まって、挿絵が結賀さとるさんだし、OVAも出ていたりするから相当面白いんだろうな、と思って読み始めた作品でした。
でもふたを開けてみると、ただのキャラ小説でした。
小説を絵で買っちゃいけない、というのを久しぶりに思い知らされた作品でした。

いろいろ設定があるのですが、突き詰めるとキャラだけで動いてるなぁ、というのに行き着きました。
そのキャラに関しても、誰を見てもムカつく、という最悪の状態でした。
誰か1人でもお気に入りがいれば違ったのでしょうが。
結賀さんが描いた漫画版はわりと読める作品だったりしたのですが……

最後の方は結賀さんの挿絵も表紙のみになってしまって、最終巻は読み終えるまでが結構苦痛でした。

以下、ネタバレありの感想です。
こちらも基本的にどす黒いと思うので、気になる方は読まないことをお勧めします。

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